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ケーススタディ心のこと

ケーススタディ ~何がストレスか分からない~≪Vol.5≫

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ケーススタディ

 さて、今日は初めてのケーススタディをご紹介してみようと思います。
実際に今から約5年前にカウンセリングと心理療法で良くなられ、セッションを終了、卒業された方のお話です。クライエント様には了解を得て、細かい設定などは少し手を加えてご紹介します。

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“ストレスで体調を崩す” とは?

 どうも体調が優れなくて病院に行き、色んな検査をしても原因が分からなくて、「ストレスですね。」と言われた事、たぶん多くの方が経験したことあるのではないかと思います。大体、胃腸の具合とか肩こりとか蕁麻疹、不眠などで現れることが多いと思います。

ブログ第3回目4回目でご紹介した、『心と身体と頭の三角関係』にも深く関わるところですので、こちらも遡って読んでみると理解を進められると思います。

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認知の歪み

 『何がストレスか分からない』というタイトルを付けました。
 ストレスが溜まっているとはいっても、上司のせいで!とか、先生のせいで!友達の○○さんのせいで!など、ストレッサー(ストレスの元となっているもの)が特定できない方や、これかな?と思っていても、そこまでひどく影響しているとは思えないような場合、認知の歪みがストレスの根本である場合が多くあります。

 この認知の歪みというものは、精神的な問題のない人であっても多かれ少なかれ、誰でもあるものなのですが、これがひどくて、たくさん歪んでいる場合は、心理療法で介入していきます。

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ケース 50代主婦 主訴 気分が塞ぎ、体調が常に悪い

 クライエントは50代女性、完全な専業主婦とまではいかなくて、週2~3日働きに出ていますが、仕事をバリバリやるタイプではありません。

 私の元でカウンセリングを始められる4年ほど前に、郊外の団地に一戸建てを購入されたそうです。
 月々のローンの返済をしたら自由に使えるお金も多くなく、これといった趣味もなく、子供もいないので犬に全愛情を注いでいる方でした。

 仕事のない日の昼間は、テーブルにお菓子と飲物をならべ、撮りためたドラマを観て、スマホゲームをする事が唯一の楽しみ、その為に色々がんばっているとおっしゃいます。

 やりたいことなどが無いわけではなさそうですが、『私は何も出来ないから…』というネガティブな言葉で、やらない理由を説明されていました。

 その方はいくつもの病院に通っていて、原因が分かっているものもあるけど、どうしてか分からない不快な症状も多いようで、落ち込みも激しく、何が辛いわけでもないのに涙が出て情けなくなり、漠然とした不安に襲われ、こんな事ではご主人にも悪いと思われていました。

カウンセラーは観察をする

 彼女がよく口にする言葉に、「一戸建ては甘くないんですよ…」というものがありました。
その他にも、住まいの環境に関することをよく話されていました。
「朝早く起きてちゃんとカーテン開けてないと、だらしない家だと思われる」とか、「毎日ちゃんと買物に行き、新鮮な食料を使ってちゃんと料理してるかとか、見てる人は見てる」とか、「ベランダの拭き掃除をしてる時に外にいるご近所さんに挨拶するのがたまらなく清々しい」とか。

 全て、【近所の人】にどう見られているかで感情の行方が決まっているのです。

 新興住宅地で一戸建てが密集している様な団地だと、確かにそんな気分にもなるかも知れませんが、それにしても少し行き過ぎです。

 彼女は、体調が優れなくて夜あまり眠れなかった日でも、朝ちゃんとカーテンを開け、せっせと朝のお掃除に精を出す “いい奥さん” を演じているのです。苦痛を感じながらも。

 そして「マンション住まいは楽でしょ?一戸建ては甘くないんですよ、、笑」という言葉が度々出てくるのです。

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理想は心の声なのか?頭の声なのか?

 昨今、【なりたい自分になる】 という言葉をよく聞きます。“なりたい自分” とはどういう自分像なのでしょうか。

 実はこの言葉はとても危険な言葉で、だいたいの人が、【他人から見て自分がどう思われているか】 という視点から見た “なりたい自分” を意識しています。

 そして、“こうなりたい” の一段階前に、“こうはなりたくない” が先にあります。

 そして、“こうはなりたくない” と思う内容とは大抵、【なりたくない人間像の人を見下したり蔑んだりしている】事実があります。
 その真逆を目指す事で、“あんな人達と私は同じではない” という安心感を得ているのです。

 そして、これらの声は明らかに、間違いなく “頭” の声です。(4回目ブログ独裁政権を参照)

自分で気づくことの重要さ

 カウンセリングの場面では、「こうしてみれば?あの方法は?」などと具体的なアドバイスはほとんどしません。その人の話す内容を、聞く側は頭をフル回転させて分析し、質問し、一緒に考えて一緒に気づくお手伝いをします。

 そもそもクライエント様は、心理士に心の内を話そうとしていても、すべてをさらけ出すことなどは不可能に近いものです。なぜなら、本人にもわかっていない(頭の意見と心の意見が違う。詳しくは4回目ブログを。)から。
 心理士と会話を続けることによって、自分の中の矛盾やこだわり、頑固さなどに気づいていきます。

この方の場合は…

 【一戸建てに住む】というステータスとそれをかなえた自分の誇りが、そうではない人を見下すという結果になり、見下すことで自分を立派で価値のある人間であると持ち上げるのだけれど、見下している人の方が幸せそうだったり、あるいは仕事ができる人だったり、あるいは楽しそうに子育てしていたり、妬ましく思うはずないのに思ってしまっているという矛盾に気づいたわけです。

 簡単に言うなら、『自分でストレスになるような原因を作り出し、それに従うことで確固たるストレスを自ら作り上げている』という訳です。

 この方の場合、解決策はたくさんありますが、人や物に頼らない自分だけの自信が圧倒的に少ない事が最大要因のように思われます。
ですが、【では何かを始めて自信をつけましょう!】というのはカウンセラーの仕事ではありません。

価値観を見直す

 ステータスというものは厄介なもので、だいたいが他人や社会などから刷り込まれているものがほとんどです。
この度のケースの方も例外ではなく、自分を大切に価値のある人間であると感じる気持ち、いわゆる自己肯定感が低いため、他者から容易に刷り込まれてしまうのです。

認知行動療法

 この方の場合、複数のアプローチを行いましたが、そのうちの一つとして認知行動療法を用い、認知の歪みに気づき、それをよく吟味してカウンセラーと一緒に手放していく作業を行いました。
 全部で2年ほどカウンセリングを続けましたが、最後にはすっかり見違える方に生まれ変わられました。打ち込める事が見つかって生き生きされていたのを覚えています。どこに住もうが関係ないでしょう。

 認知行動療法というのは、知らず知らずに思い込んで、偏って、凝り固まってしまった考え方の癖に気づいて直してく方法です。

 例えば、職場で話しかけても返事をしてくれない同僚がいて、自分が何か悪いことしたから怒っているのか、何か仕事で私が間違ったことしてしまって、尻拭いしてくれたこととかあったりしたのか…など、自分に非があるように思ってしまう癖がある人がいるとして、そのような確証がない時には、その人がただ急いでいたとか、聞こえなかったからとか、自分以外の理由である可能性も、同じだけあることに気付けるようになるようにするプラクティスのことです。

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 カウンセリングは完全に安全な場所です。

 これまで、実際のクライエント様のケースをお話ししました。かいつまんでのお話なので、すべてをここに書いているわけではないのですが、カウンセリングというものがどんなものなのか、少しわかって頂けたのではないかと思います。

 ですが、本来カウンセリングおよび心理療法は完全な守秘義務で守られています。
 私がクライエント様から知り得た情報のすべては、一切外部に漏らしてはいけない規則になっております。もちろん、私の家族にも漏らすことはできません。完全に私一人、もしくは別のカウンセラーをスタッフとして迎えることがあればそのカウンセラーとの共有以外は一切口外することはあり得ませんので、ご安心ください。

 今回のケースの方のように、本人と特定できないように多少の細工をしての公表は、書面でのご了承をもってさせていただくことになります。希望されなければ絶対に話すことはありません。

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最後に

 さて、今回も新たにテーマが出てきた気がします。
『価値観』とか、『自己肯定感』『蔑み』など、書いてみたいですね。
また折を見て書こうと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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